離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
 慶一郎おじさんは若い頃は結構な遊び人だった。いや、隠すのが上手になっただけで今もだろうか?

(もうアラフィフだしって自分では言ってるけどあいかわらずかっこいいもの)

 前菜を運んできた茜子さんが私たちのやり取りを聞いてクスクスと笑っている。

「慶一郎さんは通常運転ね。はい、前菜の盛り合わせ」

 生ハム、タコのマリネ、小エビのフリットが彩りよく白い大皿に並んでいる。この店のメニューはどれも凝ったものではないのに抜群においしいのだ。

「わぁ、今日もおいしそう! ありがとう、茜子さん」
「いっぱい食べてね」

 うふふと可憐に笑って茜子さんは続ける。

「でも、私も美紅ちゃんが変な男に騙されないかは心配だなぁ」
「えぇ? そんなに危なっかしく見えますか?」

 過保護すぎる慶一郎おじさんはともかく茜子さんの目にも私はそんなふうに映るのだろうか。自分では社会人になり以前よりずっと大人になったと思っているのに。

「ていうか慶一郎さんが大事にしすぎなのよ。美紅ちゃん、純粋培養で合コンも行ったことないでしょう」

 茜子さんの言葉に慶一郎おじさんは大きな声を出す。

「合コンにくるような男は絶対にダメだ。俺は認めないぞ」
「ほら、過保護すぎ」

 茜子さんは胸の前で腕を組んであきれた顔になる。

「いや、でもなぁ、美紅にはもっと……」
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