離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます～旦那様は政略妻への恋情を止められない～

「そんな先走った心配はいらないよ。今は仕事を覚えるのに精いっぱいで恋人なんか気配もないし。ね、そんな話より茜子さんのお料理を食べようよ」

　私は言って前菜にフォークを伸ばす。タコはプリプリで酸味が絶妙で最高においしい。

「ほら、慶一郎おじさんも！」

　皿を彼のほうへと押し出すが、慶一郎おじさんはやけに神妙な顔で私を見る。

「そうか。美紅は今、彼氏いないのか」
「うん、今は……ね。それがどうかしたの？」

　今はというより正確には一度もいたことがないけれど、ちょっと見栄を張ってしまった。

「実はな――」

　慶一郎おじさんが切り出した話は予想もしていなかったことで私は目を白黒させた。

「お、お見合い?　しかも相手は大門コーパイ？」
「あぁ。美紅が嫌なら断っていい。むしろ俺としては断ってもらいたいくらいなんだが……秘書たちが時代遅れの見合いでも相手が桔平くんなら若い女性は大歓迎のはずだと口をそろえて言うから」

　要約すると話はこうだ。なんと慶一郎おじさんはＪＧ航空の次期社長にと推されているらしい。一番の支持者は現社長、大門コーパイのお父さんだ。

「だから大門コーパイと私のお見合いなの？」
「あぁ。ＪＧ航空はこの業界には珍しくこれまでずっと世襲制だっただろ？　だから大門家との絆があったほうがいんじゃないかと社長がおっしゃっていて」
「絆がないと慶一郎おじさんは社長になれないの？」