離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
万人が認めるイケメンの桔平さんと並ぶと見劣りする感じは否めない。美貌の差も十歳の年の差も、少しでも埋めたいと私なりに努力はした。
(結局実を結ぶことはなかったけど)
「なにかリクエストはありますか? たいしたものは作れないですけど」
ダイニングで待ってくれている彼に声をかける。
「そうだな。――ハヤシライスとか。作れるか?」
桔平さんの言葉に思わず声を大きくする。
「はい、大丈夫です! ハヤシライスがお好きなんですか? 私も大好物なんです」
勢いよく言ってからハッと口をつぐむ。離婚して他人になる女の好物なんて別に知りたくもないだろう。浮かれるような場面ではなかった。
でも、彼は嫌な顔をしたりせずに口元をほころばせる。なんだか意味ありげなほほ笑みに見えた。
「そうか。じゃあ期待してる」
トントンとリズムよく玉ねぎを細切りにしていく。実は花嫁修業として料理教室にも通ったのだ。両親を早くに亡くしているので料理は慣れていたけれど、すべて自己流だったからきちんと教えてもらえてとても勉強になった。
(最後に一度だけでも桔平さんに披露する機会ができてよかった)
今日は楽しく過ごそう。ふたりきりのディナーという思い出をもらって明日から新しい人生に踏み出すのだ。忙しくて、日々勉強が必要なCAは失恋直後には最適な仕事だろう。
(結局実を結ぶことはなかったけど)
「なにかリクエストはありますか? たいしたものは作れないですけど」
ダイニングで待ってくれている彼に声をかける。
「そうだな。――ハヤシライスとか。作れるか?」
桔平さんの言葉に思わず声を大きくする。
「はい、大丈夫です! ハヤシライスがお好きなんですか? 私も大好物なんです」
勢いよく言ってからハッと口をつぐむ。離婚して他人になる女の好物なんて別に知りたくもないだろう。浮かれるような場面ではなかった。
でも、彼は嫌な顔をしたりせずに口元をほころばせる。なんだか意味ありげなほほ笑みに見えた。
「そうか。じゃあ期待してる」
トントンとリズムよく玉ねぎを細切りにしていく。実は花嫁修業として料理教室にも通ったのだ。両親を早くに亡くしているので料理は慣れていたけれど、すべて自己流だったからきちんと教えてもらえてとても勉強になった。
(最後に一度だけでも桔平さんに披露する機会ができてよかった)
今日は楽しく過ごそう。ふたりきりのディナーという思い出をもらって明日から新しい人生に踏み出すのだ。忙しくて、日々勉強が必要なCAは失恋直後には最適な仕事だろう。