離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
 彼の視線がチラリと動き私をとらえる。目が合っただけで呼吸が止まりそうになった。

「浜名美紅さん。君さえよければ俺と結婚してもらえませんか?」
「――えぇ?」

 大門コーパイは開口一番、私にプロポーズをした。

(これは夢? 私の妄想? 今、大門コーパイの口からとんでもない台詞が……)

 パニックになりかけながらも彼の恋人のうわさ話を思い出した私はためらいがちに尋ねてみた。

「でも、大門コーパイにはお付き合いしている方がいるのでは?」
「そんな相手はいないが……」

(ただのうわさだったのかな? いや、でも恋人がいないにしても私を選ぶはずはないし……)

 ドッキリ的ななにかを私はしつこく疑っていたけれど……大門社長が大喜びで話はトントン拍子に進んだ。

 四月。慶一郎おじさんの話を聞いてからちょうど半年というスピード婚で私と桔平さんは婚姻届を提出し結婚式をあげた。
 そして今から……初夜を迎える。
 披露宴をした外資系高級ホテルのスイートルーム。大きな窓の外には東京の夜景がきらめいている。とんでもない広さのリビングルームで私は身の置きどころをなくしていた。

(どうしよう。政略結婚といえども夫婦になったわけだしこのあと……)

 緊張と高揚、戸惑いに不安。赤くなったり青くなったり、私はひとりで大忙しだ。

(けど私が相手じゃ桔平さんはその気にもならないかも)
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