離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
「今日は疲れただろうしな」

 彼の笑顔はとても優しくて……残酷だった。

(うん、わかってた。予想どおりだし落ち込む必要はないよね……)

 抱いてほしいなんて言えるはずもなく私は寝室、彼はリビングで一夜を過ごした。
 スイートルームのゴージャスなベッドはひとり寝には大きすぎてますます寂しさがつのる。

(政略結婚だもん。すぐに愛し愛される関係を望むのは傲慢よ。これからともに時間を過ごせばいつかはきっと……)

 自分にそう言い聞かせようとするけれど、桔平さんに愛されている未来はどうしても想像できなくて私はこらえきれずに嗚咽を漏らす。

「うっ、くっ」

 流れる涙が枕をぬらした。

 翌朝。腫れぼったい目をした私に彼は言った。

「この結婚は慶一郎さんが社長に就任するまでの期間限定だ」
「ど、どういう意味でしょうか」

 目を瞬く私に彼は丁寧に説明してくれる。

「彼の能力なら社長に就任さえすればあとは実力で外野を黙らせることができるだろう。そこまで見届けたら、俺が浮気でもしたことにして俺たちの婚姻関係は解消しよう。きちんと解放してやるから少しだけ我慢してくれ」
「う、浮気って……そんな桔平さんの評判にかかわること」

 気にすべきところはそこではない気もしたが、私は思わず言った。


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