離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
 たくさんは乗れないと思ったのでアトラクションはいくつかに絞った。桔平さんは構造やらブレーキシステムやらに興味津々で彼らしいなと私はほほ笑ましくその様子を眺めていた。

「そろそろ昼飯にするか」
「はい。たくさん歩いたので脚も疲れました」

 もう午後一時半だ。フライトで鍛えた脚だけど、オープンと同時に入場して広いパーク内を歩き回ったのでさすがに重く感じる。
 このテーマパークは食事が豪華なことでも有名だ。きちんとしたレストランがいくつも入っている。ふたりで相談して海の見えるイタリアンレストランを選んだ。
 エメラルドグリーンと白を基調にした爽やかな内装で席はテーマパーク内のレストランとは思えないほど広々としている。窓の外には海が広がり、陽光に照らされた海面がキラキラと輝いていた。

「――えぇ、デザートもつけてください」

 オーダーを取りにきた女性店員さんに桔平さんが対応してくれる。頼んだランチのコースにはオプションでデザートもつけられるようだ。

「食後はコーヒーと紅茶、どちらになさいますか?」

 店員さんの言葉に彼は私を見る。

「美紅は紅茶……でいいか?」
「はい。紅茶でお願いします」

 店員さんが立ち去ってから私は彼に尋ねる。

「どうして私が紅茶を頼むとわかったんですか?」
「家のキッチンにちゃんとした茶葉がいくつもあるから。紅茶好きなんだろうなと思っていたが違ったか?」
「いえ、正解です」

 亡くなったお母さんが紅茶好きだったら自然と自分も好きになった。コーヒーはインスタントしか置いていないけど、紅茶は缶入りのそれなりのブランドのものをそろえている。
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