離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
(桔平さんは私にはなんの興味もないんだと思ってたけど、見ていてくれたんだな)

 あまり顔を合わせないとはいえ同じ家で暮らしていたのだから普通のことかもしれないけど……それでもうれしかった。
 しばらくすると数種の前菜が盛り合わせになったプレートが運ばれてきた。それを食べながら桔平さんが私に聞く。

「美紅は明日も休みだっけ?」
「はい、今は四勤二休のパターンが多いです」

 国内線乗務は四日間勤務して二連休というのが定番のシフトだ。だから、私は明日も休み。

「なら、夜のショーまで見て帰ろうか」
「いえいえ! 桔平さん、明日は朝一のフライトですよね? 夕方にはマンションに戻れるように帰らないと」

 朝一の便に乗務するときの出社時間は早朝四時頃だ。体調管理が重要なパイロットを睡眠不足にさせるわけにはいかない。

「大丈夫だよ。ショーは七時からだろ? 見てから帰っても十分に休める」
「ダ、ダメですよ」

 私は主張するけど彼も引かない。

「俺が見たいんだよ、美紅と一緒に。――そんなに嫌か?」
「嫌ということでは……」
「じゃあ決まりだ」

 策士な彼にのせられてショーの時間までパークに残ることになった。

(こんな強引なところもあるんだ)

 これまで見たことのなかった桔平さんの一面に翻弄されっぱなしだ。うれしいような怖いような……複雑な気持ちになる。

(これ以上好きになっていいのかな?)
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