離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
 尊や夕菜に『美紅は思ってることがすぐ顔に出る』とよく言われていたから桔平さん本人にも私の気持ちは伝わっているものとばかり思っていたけど……考えてみれば私は一度も彼に思いを打ち明けたことはなかったのだ。夫婦といっても、あまり一緒に過ごす時間も多くなかったし……。

(桔平さんは私も結婚に乗り気じゃないと思っていたのかな? そんなことなかったのに。政略結婚でもなんでも桔平さんの奥さんになれてすごく幸せだった)

 もしそれをきちんと伝えていたらなにか変わっていただろうか? 今からでも間に合うのかな?
 凛々しい彼の横顔を盗み見ながら私は胸に淡い期待が広がっていくのを感じていた。

 ショップを出た私は笑顔で桔平さんに話しかける。

「たくさん買っちゃいましたね!」

 桔平さんはワインを四本とそれに合いそうなチョコレートをいくつか購入していた。

「オフの前の日じゃないと飲めないからいつになるか……だけどな。でも楽しみだ」
「私、オフの前夜に映画を観るのが大好きなんですよ。眠くなるまで何本も観て翌日は思いきり寝坊して」
「あぁ。わかるな。じゃあ、これを飲むときは映画も観よう。ワインに合う作品はなにがあるかな?」

 桔平さんはおそらく映画通だ。リビングには本格的なホームシアターセットがあり、コレクションは結構マニアックだった。

「フランス映画とか、ですかね?」
「勉強のために字幕なしで観るか」
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