離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
 話を変えようとした私を遮って彼は言う。

「いや、美紅の話はどんなことでも聞きたい。楽しかったことも、つらかったことも」

 桔平さんの声は優しくて胸にじんわりと染み入るようだった。

「すごく悲しくてつらかったけど、私には慶一郎おじさんがいたので。慶一郎おじさんがいなかったら今頃どうなっていたか……感謝してもしきれません」
「慶一郎さんが君を引き取って育ててくれたんだったな」
「夢だった大型旅客機のライセンスを取って機長昇格も目前だったんです。それを全部私のために捨てて」

 慶一郎おじさんは私を育てる環境を整えるために地上職に転職した。JG航空社長としてバリバリ働く現在の姿もかっこいいけれど、彼は本当に空が似合う人だった。
 私の表情が曇ったのを桔平さんはすぐに見抜いて言葉を重ねた。

「捨てたとは思っていないよ、きっと。大切な美紅との暮らしを選んだんだ。後悔はしていないはず」
「そうでしょうか?」
「あぁ。慶一郎さんの溺愛ぶりを見ればよくわかる」

 私はクスリと笑みをこぼす。

「それは、はい。ものすごく過保護で叔父馬鹿なんです。慶一郎さんおじさんの目には私が絶世の美女に映っているみたいで。元パイロットで今も視力はすごくいいのに、おかしいでしょう」

 苦笑いの私とは対照的に桔平さんは真顔で口を開く。

「俺も視力のよさは社内で一、二を争うレベルだが……慶一郎さんに全面的に同意するな」
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