離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
「へ?」

 思わず間抜けな声を出した私に彼はグッと顔を近づけささやく。

「俺の目にも美紅は世界一かわいく見える」
「なっ。そ、そんなお世辞を言われてもなにも出せませんけど……」

 熱くなる頬を押さえながら私は言う。

「――本気だよ」

(美しすぎる顔でこんな甘い台詞、破壊力抜群すぎてずるい)

 それから、桔平さんはやや申し訳なさそうな顔で私を見た。

「両親を事故でという話は聞いていたが、君も同乗していたのか。それなら車は苦手だよな? 気遣えずにすまなかった」

 今日、車で来たことを気にしてくれているのだろう。私はすぐに否定した。

「いえいえ。たしかに事故の直後は車にかぎらず乗りもの全部が怖くなったりもしましたが……もうすっかり克服しています。車が怖いままじゃ生活もままならないですし」

 私が明るく言うと桔平さんは軽く目を細めた。

「強いんだな」

 彼の表情にデジャヴを感じた。あのときも彼はこんなふうに柔らかくほほ笑んでくれたのだ。ドキドキしながら私は口を開く。

「――ある人のおかげなんです」
「ある人?」
「はい。私のもうひとりの恩人です」

 私は桔平さんに過去を語る。
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