離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
「そうだったらうれしいです」

(CAになるよりずっと前から私は桔平さんに恋をしていた)

 夜七時、念願のショーの時間になった。音楽とプロジェクションマッピング、そして花火もあがる大掛かりなエンターテイメントショーらしい。
 桔平さんは私の手を引き高い塔の階段をのぼる。

「わっ、本当だ! よく見えますね」
「調べてみたらここが穴場との情報が出てきたんだ」

 最前列で見るよりはもちろん遠くなるが全体を見渡せるし、なにより人混みで揉みくちゃにならなくて済むのがありがたい。

「空いてるし最高です」
「喜んでもらえてよかった」

 きらめく光が織りなす物語にふたりとも黙って見入っていた。ラストを飾るのは大きな花火で柳の葉のように降るさまが見事だった。

「綺麗ですね~」
「あぁ」

 桔平さんの視線が花火ではなく自分に向いていることに気がついて私はたじろぐ。射貫くように強くまっすぐな眼差しがくすぐったい。

「き、桔平さん?」

 彼の手が伸びてきて私の耳から首筋をそっとなぞる。彼に触れられただけで肌が熱を帯びる気がした。まるで映画のハイライトのように桔平さんの顔がゆっくりと近づく。ぞくりとする色っぽい声で彼は言う。

「キスしたい。――嫌だったら全力で押しのけて」
「そ、そんな……」

 言葉とは裏腹に彼はちっとも強引ではない。優しい手つきで顎を持ちあげ、焦らす速度で唇を寄せる。
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