離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
(あらがえるわけない。だって……この唇は私がずっと焦がれていたものだもの)

 何度願ったことだろう。一度だけでもいいからキスしてほしいと。それがついに叶うのだ。心臓は今にも爆発しそうなほどに早鐘を打っている。
 柔らかなぬくもりが唇に落ちる。それだけで膝からがくりと崩れ落ちそうなのに角度を変えて今度はもう少しはっきりと唇が押し当てられた。

「んんっ」

 思わず漏らした吐息をのみ込むように彼のキスは深くなる。巧みに動く舌先が私の本能を呼び覚ます。どうしようもないほどに胸が甘く疼いた。
 頭が真っ白でなにも考えられなくなる。呼吸が熱く、浅くなっていく。そして驚くべきことにそれは私だけではないのだ。

「はっ」

 桔平さんの唇からこぼれる吐息は官能的で私の身体の奥深くに響く。

「美紅」

 私を見つめる瞳は熱っぽく……これまで見たことのなかった男の顔をしている。

「き、桔平さんっ」

 彼は弱ったような顔で私の唇を解放する。

「ここらへんでストップしておこう。――でないと明日のフライトに支障が出そうだ」
「は、い」

 小さく返事をすると彼はコツンと額を合わせた。悩ましげな声でささやく。

「執行猶予期間とはいえ……美紅は俺の妻だ。だから、そういう女の顔は俺の前だけにしてくれよ」

 最高のデートと甘いキス。自惚れてしまいそうだ。

 
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