離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
「生ハムとアスパラのサラダは白ワインに合わせるのがいいんでしょうか?」
「そうだな。軽めの食事はロゼとも合う。こっちの頬肉の煮込みは赤に合わせようと思って選んだ」
「なるほど。やっぱり牛肉は赤ですよね」

 ちょっとお勉強モードに入りつつグラスにワインを注ぐ。

「映画はなにを観ようか?」

 配信サービスの画面を操作しながら桔平さんが聞く。

「私はベタなハリウッドの大作とか泣ける恋愛ものも好きですけど。桔平さんはどんなのがお好みですか?」
「俺はアクションとサスペンスだな。英語の勉強もかねるならミュージカルはどうだ?」
「あ、ミュージカルは大好きです!」

 数年前に話題になったミュージカル映画を字幕なしで観ることにした。
 ふたりで並んでソファに腰を落ち着ける。

「フランス映画でなくてよかったか?」

 ちょっと意地悪な笑みで彼は言う。

「今夜はワインと英語のお勉強だけで精いっぱいです」
「ははっ。冗談だ」

 桔平さんがグイッと私の腰を引き寄せると私の頭が彼の肩にぽすりと落ちた。

(恋人同士みたい。いや、戸籍上は一応夫婦なんだけど……)

 ミュージカルは舞台を観にいくこともあるほど大好きだけど、今夜はちっとも集中できなかった。だって、ほんの少し視線をあげればすぐそこに桔平さんの綺麗な顔があるのだ。集中が続かないのも仕方ないと思う。

「今の言い回しは便利だから覚えておくといいかも」
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