離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
「浜名さん! なにぼやっとしてるのよ」
「ご、ごめんなさい! すぐに行きます」

 先輩から飛んでくる厳しい言葉に私は慌てて返事をする。
 今から本日最後のフライト、仙台から東京へと帰る便に乗務するところなのだ。乗務中は仕事に集中しなければと私はあらためて気を引き締め直す。
 機体に乗り込む際にチラリと見あげた仙台の空は荒れ模様だった。横殴りの雨で視界も不明瞭だ。

(今日は全国的に天気が悪いのよね)

 こんな日は機体が揺れてお客さまは不安になりやすい。その気持ちに寄り添い、少しでも安心できるようにすることはCAの大切な仕事だ。
 予想どおり、離陸後すぐに機体が大きく揺れて小さな子どもが泣き出してしまった。サービスのおもちゃを貸し出すことでようやく落ち着いてくれたと思ったら、今度は別のお客さまからその泣き声がうるさくて休めなかったとのお叱りをいただいてしまった。

「あぁ、今日は東京が遠く感じる」

 ドリンクサービスの準備をしながら小さく愚痴をこぼすと一緒に作業をしていた尊が励ましてくれた。
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