離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
 この天候では誰の操縦でも揺れるだろうがたしかにパイロットの技量の影響はゼロではない。パイロットは機長と副操縦士のふたりがペアとなって乗務する。PF――パイロットフライングとPM――パイロットモニタリングのふたつの役割があり、前者は主に操縦を後者は計器の監視や航空無線を担当する。操縦は機長じゃなくてはいけないわけではなく副操縦士も担当する。実際、この便のPFはコーパイの沖野(おきの)さんだ。

(でも沖野コーパイは優秀だと聞くし、パイロットだけに責任があるわけじゃないけど)

 そう思いながらも私はお客さまに頭をさげる。

「大変申し訳ございません。火傷などされていないでしょうか」
「それは大丈夫だけど、もっとちゃんと拭いてくれよ」

 彼のにやけた目元に嫌な予感がしたが案の定だった。彼は私の手の上に自分のそれを重ね、やけにねっとりと撫で回す。

「君は脚が綺麗だねぇ。最近のCAはスカートが長すぎないか? 昔はもっと短くてよかったのに」

 返答に困ってしまう。少なくともJG航空の歴代制服にミニスカートはなかったと記憶しているが。
 おとなしく見える容姿のせいか私はこういうセクハラ行為を受けやすいタイプだ。

(またか。刺激しないようにして早めに離れよう)

 事務的に対応を済ませ次のお客さまのもとへ向かおうとした私に彼は声を荒らげた。
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