離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
 例のお客さまへの対応についてデブリの場でお叱りを受けるものと覚悟していたのだがチーフはなにも言わなかった。それで自分から話を切り出すことにしたのだ。
 彼女は「あぁ」とうなずく。

「今日のケースは浜名さんの落ち度ではないと思うわ。チームでカバーし合うのも大切なことだしね。ま、これは私の個人的な考えもあるし……チーフによっては注意を受けることもあるかもしれないけど」
「――はい」

(助け合いは大事だけど私は圧倒的に助けてもらう側になることが多い。今のままじゃダメだよね)

「園部くんにはお礼を言っておきなさい。私の指示を待たずに彼が動いてくれたのよ」
「ありがとうございます!」

 チーフに頭をさげ今度は尊を探した。ロッカールームに向かう途中でツンツン頭の後ろ姿を発見して私は彼を呼ぶ。

「尊! おつかれさま」
「おぉ」
「ちょっとだけいい?」

 私と尊はロッカールームの手前にある自動販売機の並ぶエリアで缶ジュースを片手に立ち話をした。

「あー、疲れた。なんか今日はみんなピリピリしててあんまり雰囲気よくなったよな」
「天候が不安定だったしね」

 尊の言葉に私もうなずく。今日のチーフはとても優しかったけれど、たしかにCA内のムードはあまりよくなかった。天候不順だと心配や仕事が増えるからだろうと思ったが彼は違う意見のようだ。声をひそめてささやく。

「PFが沖野コーパイだったからなぁ」

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