離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
「優秀だって聞くけど?」
私は首をかしげる。何度か大きく機体が揺れたのは事実だがこの天候では仕方ないだろう。記憶違いがなければ私が彼の操縦する便に乗務したのは今日が初めてだったけれど、尊は何度か乗務したことがあるらしい。
「エリートなんだけど……ちょっとワンマンできついところがある人なんだよ。だから彼がいるとCAも整備士も緊張するんだよな」
「そうなんだ」
ピリピリした空気にはそんな事情もあったのか。パイロットはその便にかかわる全員をまとめあげる指揮者のような存在だ。穏やかに接してくれる人ならばみんなもなごやかになるし、厳しい人だと緊張で張りつめた空気になる。緩すぎても威圧的すぎてもいけない。
(やっぱり大変な仕事だよね)
「あっ」
私は思い出したように声をあげる。つい、いつものノリで世間話を始めてしまったが尊に声をかけたのには理由があったのだ。
あらためて彼に向き直る。
「さっきは助けてくれてありがとう」
「あのセクハラ客?」
「うん。私の対応だと怒らせてしまうことが多くて……尊が来てくれて助かった」
尊は缶コーヒーのプルタグを引きながら苦笑する。
「あのお客さまは俺が男だから黙っただけだよ。いまだにいるんだな、ああいう前時代的な感覚の人。うちのCAのなかじゃ俺なんかおとなしいほうだと思うんだけど」
私は首をかしげる。何度か大きく機体が揺れたのは事実だがこの天候では仕方ないだろう。記憶違いがなければ私が彼の操縦する便に乗務したのは今日が初めてだったけれど、尊は何度か乗務したことがあるらしい。
「エリートなんだけど……ちょっとワンマンできついところがある人なんだよ。だから彼がいるとCAも整備士も緊張するんだよな」
「そうなんだ」
ピリピリした空気にはそんな事情もあったのか。パイロットはその便にかかわる全員をまとめあげる指揮者のような存在だ。穏やかに接してくれる人ならばみんなもなごやかになるし、厳しい人だと緊張で張りつめた空気になる。緩すぎても威圧的すぎてもいけない。
(やっぱり大変な仕事だよね)
「あっ」
私は思い出したように声をあげる。つい、いつものノリで世間話を始めてしまったが尊に声をかけたのには理由があったのだ。
あらためて彼に向き直る。
「さっきは助けてくれてありがとう」
「あのセクハラ客?」
「うん。私の対応だと怒らせてしまうことが多くて……尊が来てくれて助かった」
尊は缶コーヒーのプルタグを引きながら苦笑する。
「あのお客さまは俺が男だから黙っただけだよ。いまだにいるんだな、ああいう前時代的な感覚の人。うちのCAのなかじゃ俺なんかおとなしいほうだと思うんだけど」