離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます～旦那様は政略妻への恋情を止められない～

　沖野は俺の顔は見ずに短く答えた。彼の声にわずかな敵意がにじんでいたような気もしたが考えすぎだろうか。

　ミュンヘンでのステイは二泊だ。二泊ステイの場合、初日は身体を休めることに徹して残り一日は街歩きや軽い運動をして過ごすことが多い。
　二日目の昼過ぎ。ジョギングでかいた汗をシャワールームで流しながら考えた。

（美紅への土産はなにがいいかな？）

　これまでは離婚猶予期間だったこともあり、あまり彼女の負担にならないように紅茶や菓子などの消えものを選ぶようにしていた。けれど、やっと夫婦になれたから……今回はもう少し気合いを入れてもいいだろうか。

（スカーフ、ジュエリー。なにを贈ったら喜んでくれるだろうか）

　美紅はなにもいらないと言っていたが俺自身が楽しくて仕方がないのだ。最近は彼女の笑顔を浮かべながら土産探しをするのがステイ先での一番の楽しみになっている。

　着替えを済ませてホテルを出ると見知った顔の団体がなにやら話し込んでいた。うちのＣＡたちだ。

「あら、大門機長。お疲れさまです」

　明るく声をかけてきたのは小林だった。彼女はとても社交的な性格でステイ先では後輩たちを誘って一緒に食事をすることが多いと以前にも言っていた。きっと今日もその予定なのだろう。