雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
ちょうど2週間前。
女子更衣室から出てきたのは見るからに怪しげな男。
声をかけると走り出したその男を、私は捕まえて拘束した。
昔、過保護な父に2年ほど習わされていた護身術と柔道が役に立ったのだ。
その後、先生の話によると男の鞄からは女子生徒の制服が出てきたらしい。
「その前は男と猫を助けたんだろ。お前の噂はそんなのばっか」
まさか、暴走族総長の耳に私の噂が入っていたとは。
前々から姫候補をリサーチしていたのだろうか。
ちなみに男と猫を助けたというのは、猫を助けるため木に登った委員長が木から降りられなくなり、私が駆けつけたという話。
「俺は姫にするなら、お前みたいな強さと優しさを兼ね備えてる奴がいい」
彼が求める姫はあくまでも櫻子さんの身代わり。
それでも、私がいいと言ってもらえたことは素直に嬉しかった。
人の役に立ちながらお金をもらえるなら、喜んでその役を引き受けたい。
だけど、気になることがもう一つ……。
「あの……念の為、確認するけど。そのお金って出処は?」
何か悪いことをして得たお金だったら受け取れない。