雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
「瑠佳ちゃん、お疲れ様」
「お先に失礼します」
17時。スーパーでのバイトを終えた私は隣のコンビニへと走る。
待ち合わせの場所は昨夜、怜央から指定された。
その中で私が“雇われの姫”だということは、チームの皆にも黙っておこうという話になった。
敵を欺くには味方から。
そういう判断らしい。
「ごめん、お待たせ」
怜央の姿を見つけた私は急いで駆け寄る。
「あいつらもう集まってるってよ。俺らも行くか」
怜央はそう口にすると私にヘルメットを被せた。
そして、髪が絡まないように優しく、後ろへと流す。
「あ、のさ。昨日、言い忘れたんだけど私ヘルメット被れるよ?」
「まぁ……そうだろうな。でも、姫にならなんでもしてやりてぇんじゃないの?総長って」
私に聞かれてもわからない。
怜央にとっても私は初めての姫で、色々試行錯誤しているのだろうか。
それともこれは本来、櫻子さんにしてあげたかったこと?
なぜか昨日から怜央が優しく接してくれるたびに、櫻子さんの影がちらつく。
どうしてだろう……?