雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
「あ、その前に飲み物どうぞ。お菓子も食べてください」
「あ、ありがとう」
ソファーの前にはローテーブルが置いてあり、そこに並べられた2つのコップと数種類のお菓子。
下では怜央達が真剣な表情で話をしているのに、ここはホームパーティーのような雰囲気だ。
冬馬くんの明るいキャラのせいでもあるのかもしれない。
少し幼い顔立ちをした彼は、暴走族というよりもアイドルの方が似合ってそうだ。
「あのソファーに座ってる人達って偉い人なの?」
冬馬くんが用意してくれたジュースで喉を潤した後、ここにきて一番初めに気になったことを尋ねる。
「はい、ソファーに座ってるのは闇狼の幹部です」
「ダーク、ウルフ……?」
「俺らのチーム名ですよ。……えっ、まさか知りませんでしたか」
私な反応に驚いた様子を見せる冬馬くん。
そりゃ、そういう反応になるだろう。
総長の姫がチーム名を知らないなんて、おかしな話だ。
私は本物の姫を演じることが仕事なのに、早速やらかしてしまった。
自らの失敗に肩を落としていると、隣から笑い声が聞こえてくる。