雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
「瑠佳さんって変わってますね。…って、すみません。姫に失礼な口聞いて」
どうやら冬馬くんは、私を変わった人だと思ったらしい。
これは……ギリギリセーフ?
冬馬くんじゃなかったら、一発アウトだった気がする。
「さっき怜央さんと話してた人が真宙さんでうちの副総長です。その前に座ってる黒髪の人がヒロトさんで、隣がトキさん。幹部にはあと一人ライトさんって人がいます」
やっぱり、怜央に話しかけていた人は偉い人だったんだ。
「ライトさんって人は会合に出席しなくてもいいの?」
「ライトさんは特別です。うちの情報屋ですけど、チームの集まりにはほとんど顔を見せません。でも、真宙さんが言うには闇狼のNo.2だって」
情報屋。そんな役職もあるんだ。
「冬馬くんの役職は何になるの?」
「幹部以外の役職は特にないです。でも、姫を任されるってことは幹部入りに一番近い男かもしれません。……冗談っす」
冬馬くんの軽快なトークに思わず頬が緩む。
彼と話していると、ここが暴走族のアジトだということを忘れてしまいそうだ。