雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。


「あ、そういや俺、怜央さんから狂猫(クレイジーキャット)の話をするよう頼まれてたんです」

クレイジーキャット?それも暴走族のチーム名なのだろうか。



「狂猫っていうのはうちと敵対してるチームのことです。数年前までは大したことなかったんですけど、総長が香坂(こうさか)に代わってからやばくて。今日の会合も大半が狂猫についてだと思います」


「やばいって具体的には?」

「金で人を脅したり、他のチームの奴を引き抜いたり……やりたい放題ですよ。噂ではその資金源が香坂の姫だとか」

つまり、狂猫の姫はお金持ちのお嬢さんってことか。

私とは正反対だ。

「これが香坂です。いずれ瑠佳さんに近づいてくると思うんで、顔覚えといて下さい」

そう言って見せられたのは、一枚の写真。

そこには写っていたのはスーツに見を包む金髪の男。細い眉毛に鋭い眼光。

年は私達よりも上に見える。


「姫の正体はまだわからなくて。今、ライトさんが調査してるところです」

姫を隠す総長もいるんだ。

姫=狙われやすいとなれば、そういうチームがあってもおかしくはない。

どこかのご令嬢なら尚更、秘密にしておかなければならないのだろう。


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