雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。


「俺の話はこれで終わりです。他に何か気になることありますか?」

怜央が総長を務める闇狼のこと、それから敵対するチームの狂猫のこと。


それは冬馬くんの話でだいたいわかった。

あと他に気になることがあるとすれば……。


「冬馬くんは櫻子さんって知ってる?」

本来、ここにいるはずだった彼女のこと。


「もちろん知ってますよ!なんか、ふわふわしてて、可愛らしい人なんですけど、芯があるというかなんというか……。一言でまとめるなら素敵な人です!」

……私が想像していた通りの人だ。


「手術が終わったら、また皆で遊びに行きたいな」

皆にも会わせたことがあるんだ。


その時、怜央はなんと言って彼女を紹介したのだろう。

そんなことが気になって、胸がズキズキと痛みはじめる。

変なの。私にとって怜央はただの雇用主なのに。



「前は皆でバーベキューしたんです。次は瑠佳さんも一緒ですね。きっと、すぐ仲良くなれますよ」

ありがとう、冬馬くん。

次の予定に私も入れてくれて。

でもね、櫻子さんがここへ戻ってきたとき、私はもう怜央の側にはいないんだ。

それが私達の本当の関係だから───。


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