雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。


「これ、絶対10分なんかじゃ終わらないでしょ」

ダンボール箱に入ったプリントを見ながら、一人ため息をつく。


5分前、柳沢先生に頼まれたのは課題のプリントを5枚セットにしてホッチキスで止めることだった。

「仕事の早い水瀬なら10分でできる」


そんな口車に乗せられて引き受けたが、この量、絶対10分なんかじゃ終わらない。

現に5分が経過したというのに、まだ10分の1程度しか終わっていないのだから。

「どうしよう、冬馬くん来ちゃうよ」

冬馬くんからはあと15分程度で着きそうだと連絡がきた。

このままだと確実に冬馬くんを待たせることになる。

別に彼はそんなことで怒りはしないだろう。

けれど、狂猫が動き出した今、私の都合で闇狼メンバーの時間を削るわけにはいかない。

1秒も休憩することなく作業を進めているとガラガラッと前方のドアが開いた。

「あれ、水瀬さん何してるの?」

そう声をかけたきたのは、うちのクラスの学級委員長、石橋(いしばし)くん。

通称、委員長。

「柳沢先生から雑用頼まれて。委員長は何してたの?」

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