雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
「……えぇー。そうかな?怜央が冬馬くんのことを信頼してるからじゃない?」
むしろその線しか考えられない。
偽りの姫に独占欲なんか抱かないでしょ。
「そうですかね?あ!そういや、ずっと気になってたことがあるんですけど、その狼って怜央さんからもらったんですか?」
冬馬くんの視線の先には、私の鞄で揺れる狼のキーホルダー。
バイト初日に怜央からもらったものだ。
「うん、そうだよ」
「それって総長と副総長、それから幹部の人達しか持ってないんですよ」
「そうなの!?」
怜央が護衛用に用意してくれた物だと思っていた。
「瞳がそれぞれの髪の色を表してて、怜央さんなら銀色!皆、護衛用に彼女に渡すんです」
この狼にそんな意味があるなんて知らなかった。
隣を歩く冬馬くんは「俺もいつかその狼を持てるような人間になって、大切な彼女に渡したいです」と目を輝かせている。
「冬馬くんなら叶うよ、きっと」
「瑠佳さん……!ありがとうございます。その時がきたら、櫻子さんにかっけーブラウンの瞳をお願いしないと」
「……どうして、櫻子さん?」