雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
「どうしてって、このキーホルダーを作ったのが櫻子さんだからですよ?」
私が知らなかったのは狼のキーホルダーが持つ意味だけではなかったようだ。
櫻子さんの手作り……。
怜央はあえて何も言わなかったのだろうか。
いや、怜央からしたらそんなことを説明する義理もないか。
この狼が怜央に似ているように見えたのは、櫻子さんが怜央を想いながら作ったから?
……彼女はどんな想いでこれを怜央に託したのだろう。
私がキーホルダーに気を取られ足を止めていると、数歩前にいた冬馬くんが叫んだ。
「瑠佳さん!」
その直後、布のようなもので鼻と口を塞がれる。
すると、視界は大きく歪み、私はそのまま意識を手放した──。