雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
「今日は自分のことだけ考えろ」
自分のことだけ……。
やっぱり、それはできない。
少しだけお邪魔したら帰ろう。
そう思ったのだが……、
怜央の家に上がりスマホを確認すると志貴からのメッセージが届いていた。
《真宙さんと冬馬さんって人が家に来た。俺が一人だから泊まってくって。姉ちゃんも風邪に気をつけろよ》
「風邪……?」
私はこのとおり、ピンピンしているのだけど。
「暴走族に連れ去られた話なんかすると心配するだろ。だから、弟には俺の看病のために泊まるってことにしてある」
そうだ、私は家政婦をしてることになってるんだった。
「香坂のことはトキが張ってるし、これで帰る理由はなくなっただろ?」
真宙くんと冬馬くんがいて、香坂にも尾行がついてるなら安心だけど……。
「いいのかな、皆に迷惑かけて」
「んなこと気にしてたのかよ。前にも言っただろ?姫はチームで護るって。今日お前が連れ去られたのは俺と闇狼、全体の責任だ。誰も瑠佳のことを迷惑だなんて思ってない」
責任。その言葉に私と一緒にいた彼の顔がチラつく。