雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
「もちろん大丈夫だよ。久しぶりに志「誕生日パーティー?」
新那が話し終える前に話し出す怜央。
……もしかしたら、この2人は相性が悪いのかもしれない。
「瑠佳ちゃんが毎年開く志貴の誕生日パーティーのことです」
『そんなことも知らなかったんですか?』と謎のマウントを取る新那。
「それって俺も行っていいの?」
「いいけど。普通の誕生日パーティーだよ?」
「弟には一度、挨拶しただけだったろ。ちゃんと話してみたいし」
雇われの姫をはじめた数日後、バイト帰りに家まで送ってくれた怜央。
その時、一度だけ志貴と顔を合わせたことがある。
「でも、毎年3人でやってるなら遠慮するけど。弟と会うのは別の機会でもいいし」
「それなら大丈夫。志貴も友達連れてくるんだって。しかも、女の子……彼女かな?」
「え、志貴に彼女?」
「まだわからないけど。今年も志貴のことよろしくね」
当日は新那が志貴を連れ出してくれる。
私が準備をしてる間に、志貴から直接プレゼントのリクエスを聞き、その場で渡してしまうのが新那流だ。
「任せて」
「じゃあ、2人とも7月10日ね」
「うん」「ああ」
7月10日──。
まさかこの日に狂猫が動くなんて、私達はまだ知る由もなかった。