雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。
香坂と目の前にいる彼女が契約上の関係だったことよりも、私達の関係を言い当てられた方に驚きを隠せない。
「……図星か。おかしいと思ったんだよ。だって、蓮見が大事にしてる幼なじみと君、全然タイプが違うから」
そんなの知ってた。
私は偽りの姫で、櫻子さんの代わりに大事にされてるって。
わかってたけど、
「なぁ、虚しくねぇか?偽物のお姫様」
“偽物”という言葉は怜央への気持ちに気づいた今、ひどく胸に突き刺さった。
だけど、私の心が折れそうなとき怜央はいつも助けに来てくれた、護ってくれた。
「誰が偽物だって?」
ほら、こうやって何度も私を救ってくれるんだ。
倉庫内に光が差し込むと、怜央を先頭に闇狼とメンバーが次々と走り出した。
一人、二人と狂猫のメンバーをなぎ倒していく。
そして怜央は、
「確かに瑠佳は俺が金で雇った偽りの姫だ。だけど、俺が瑠佳を想う気持ちは本物なんだよ」
と叫ぶと、香坂の顔めがけて強烈なパンチを放った。
そこから闇狼と狂猫の乱闘は激しくなる。
鳴り続ける音楽と男たちの怒号が響き渡る中、私は誰かに手を引かれた。
「ここは危険だから移動するよ。走って」