雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。


「あのー、それで話って?」

人を連れてきておいて、一言も喋らない蓮見怜央の代わりに私が話を切り出す。


「お前、バイト探してんの?」

「え……?」

会話は意外なところからはじまった。

「……探してるけど」

どうしてわかったの?

もしかして、エスパー?なんてありもしないことを考えていると、私の右手を指差す蓮見怜央。


その先には筒状に丸められた求人誌。

……どうやら、動揺していた私は読みかけの求人誌を持ってきてしまったらしい。

「間違えて持ってきちゃったみたい」

ハハハ。と笑ってみせるが、目の前の綺麗な顔はビクともしない。

愛想笑いもなし、と。


「バイト探してるなら、俺に雇われる気ねぇ?」

「はい……?」

バイトの話は私が求人誌を持っていたから。

それだけの理由だと思っていたが、深堀するってことはこれが本題?


というか、俺に雇われる気って……?


「雇うとは?」

まるで意味でも検索するような言葉を口にした私に、彼は面倒くさそうな顔をする。

……察しの悪い人間で、すみませんね。

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