雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。


「俺が求めてるのは姫だ」

「姫……?って、お姫様?私そんなキャラじゃないけど」

そういうのは可愛らしくて、綺麗なドレスが似合う……そう、新那のような人間だ。 


私みたいにおにぎりを流し込むように食べたり、求人誌片手に廊下を歩くような人間じゃない。

それにしても、暴走族の総長から『姫』という可愛らしい単語が出てきたことに驚いた。

「俺が言ってるのは、おとぎ話に出てくるようなお姫様じゃねぇよ。総長の姫」

総長の姫?何それ。初めて聞いた。

彼らの世界では当たり前のように使われてる言葉なのだろうか。

「その姫って何者なの?」

「総長にとって特別な女」

特別な女を彼はお金で雇うの?

「蓮見(怜央じゃなくて)……くんのところに姫はいないの?」


彼の特別になりたい女子なんて山程いるだろうに。


「俺が総長になってからはいない。姫っていうのはチームにとっても特別な存在なんだ。だから、敵対してる奴らは相手を潰すために姫を狙う」

姫は特別だけど、弱点でもあるっていうことか。

暴走族の姫について、なんとなくだがわかってきた。


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