「お嬢さんを俺にください!」

「夏休み一緒にフェス行かない?」



「あー、いいね…
けど、ごめん
俺、行けないわ」



バーで俺のファンになってくれた女性


毎週俺のギターを聴きに来てくれて
たまに会って話す仲になった


彼女は仕事してて
俺は学生


彼女の仕事が休みの月曜日
学校帰りにたまに会う



「あ、ユーヤ受験生だもんね」



「んー、まぁ…
受験もしないけど…
ちょっと夢があって
そのためにバイトして金貯めてるから…」



「若いっていいね!
夢って?
メジャーデビューとか?」



「や…そんなすごいことじゃない
夢っていうか、やりたいこと」



彼女は夢を叶えた人

自分の好きなことを仕事にしてる人

自分の店を持ってる


仕事の話をする彼女は
いつもキラキラしてる


それを見ていつも
いいな…って思う

憧れる


俺が夢をもったのは
きっと彼女の影響だと思う



お互い
いつの間にか敬語じゃなくなってて

マスターがユーヤって呼ぶからか
自然とユーヤって呼ばれてて

一応彼女が年上だから
イブキさんて呼んでたけど
イブキでいいよ!って言われても
なかなか呼びにくい


SNSから連絡がきて
バー以外でふたりで会うようになった



「ユーヤの夢、応援したいな…

私ね、自分の店を持つ時
失ったものがあるの」



「失ったもの?」



「うん
その時、付き合ってたカレシ

私は彼のこと好きで
彼がいるから何でも頑張れたし
彼が原動力だった

でも出店準備とか忙しすぎて
彼に別れようって言われたの

あの時、お店出さなかったら
今頃、彼と結婚してたかな…とか
もぉ子供いたりするかな…とか
たまに考える

それくらい私は彼を好きだったし
将来の事も考えてた

でも彼は違ったのかもね
そこまで私のこと好きじゃなかったのかも…

頑張ってねって言われて
嬉しくて…
頑張りすぎた

でも夢を叶えるって
それくらい頑張らないと叶わないかも…」



「イブキのこと好きだから
応援してくれたんじゃない?」



「そーかな?
あ、ユーヤ時間?
今日もバイト頑張ってね」



「うん、そろそろ行こうかな…
ま、とりあえずバイト頑張るわ」



夢を叶えたイブキは
カッコいい



その彼と結婚して今子供がいたとしても
幸せだったのかもしれないけど



どっちが良かったのかなんて考えても
人生は変えられない



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