「お嬢さんを俺にください!」
「ごちそうさまでした」
俺が残したスープも飲みたいと言って
彼女はスープを飲み干した
間接キスじゃん
じゃなくて
お腹空いてたんだよな
「ごめんね
なんか、なんもなくて…」
「んーん…
お腹いっぱい
あ、ごめんなさい
アナタのぶんまで食べちゃって…」
「俺はいつもこんなだから…」
「オレ…アナタの…名前は?」
「俺の?名前?」
「はい」
「悠哉(ゆうや)」
「ユウヤ…ユーヤ?」
「うん」
カタコト?
やっぱ外人?
ま、可愛いからいいか
「ユーヤ…」
人懐っこくて甘い声
可愛い♡
1番最初に聞いた声は
冷たくて綺麗な声だった
身体も少しは温まったかな
「ユーヤ…おなかいっぱいなったら…
眠いかも…」
「あー、そーだね
俺も眠いかも…」
時計を見たら2時をまわってた
や、だけどさ
どーする?
布団コレしかない問題
ストーブの前で布団に包まってる彼女
それしか布団なくて…
スー…スー…スー…
え…
寝てる?
彼女をのぞき込んだら
もぉ寝てた
知らない男のアパートで眠れるって
(しかもさっき会ったばっかりの)
きっとホッとしたんだろうな
俺も眠い
明日はとりあえず
学校休む
雪だし寒いし
可愛い子いるし
休む
さっきハンガーから外したコートを羽織って
ストーブの前の彼女に並んだ
まつげ長!
ほっぺホワホワ
おでこツルツル
可愛い♡
キモ!俺
けど可愛い♡
唇、プルプルしてて
長くて艶々した髪が顔に掛かってた
第一印象キャバ嬢だったけど
洗われた髪はクルクルしてなくてサラサラで
メイクしてないと俺より年下にも見えるかも
キラキラした指先
小さい手
さっき握った手は冷たくて硬かった
寒かったよね
手首の赤いアザが痛々しい
誰にされたの?
このまま寝たら
朝起きたら夢だったって
隣には誰もいなくて
それはそれで
いい夢みたな…って
可愛いかったな…って
冬休み最後の夢
あ、初夢かも…
今年はいいことありそう
ずっと冬休みだったらな…
ずっと…
ずっとここにいてもいいよ
ずっと…
こんなアパートだけど
外よりは温かいからさ
ずっといてよ