「お嬢さんを俺にください!」
あの雪の日
私は陽介から逃げて
ユーヤに拾われた
新年の家族顔合わせで
正式に陽介と結婚することが決まって
それが嫌だった
陽介は年上で背が高くてイケメンで
友達には羨ましがられてた
自分が好きになった人と
付き合ったり別れたりしてる友達が
私はずっと羨ましかった
陽介と結婚したら
きっと何不自由ない生活が送れる
でも陽介にはときめかないし
少しも魅力を感じない
それは
記憶を失う前もそうだったと思う
お父さん、お母さん
ごめんなさい
私ね
好きな人ができたの
その人は自分の力で生きててね
私の知らない事をたくさん知ってる
その人といると楽しいの
一緒にいたいと思うの
その人が生きていく一生が知りたいの
「陽介…
陽介は、私のこと好きなの?」
陽介に好きだって言われたことって
あったっけ?
一度でもいいから言ってくれた
ユーヤの「好き」に
私の胸はときめいた
「フ…優里愛、今更なに言ってるの?」
陽介、それ答えになってないよ
私の質問を余裕で鼻で笑った
そうゆうところも好きじゃない
「ごめん…変なこと聞いて…」
陽介も本当は
私を好きじゃないでしょ
「好き」って言ってくれなくてもいい
今更言われたとしても
きっと
ときめかないから
「優里愛、まだ体調が優れないの?
好きだから結婚するに決まってるだろ」
ズルい言い方
私は陽介のこと好きじゃないよ
どっちがズルいかな?
好きなふりするのと
好きじゃないって言わないの