「お嬢さんを俺にください!」
「今日、クリスマスで
バーのバイト頼まれて…」
ストーブの前で
だんだん身体が温かくなって
私の涙が乾いた頃
ユーヤが話し始めた
心地いいユーヤの胸の音と
ユーヤの声
気持ちが温かくなる
なんでかな
ユーヤの声を聞くと幸せな気持ちになる
「レーニャは絶対来ないって思ってたから
ごめん、遅くなって…寒かったよな」
違う
ユーヤが遅かったから寒いんじゃない
「んーん…
ごめん、急に来て…」
「クリスマスって
大切な人と過ごす日みたいじゃん
バーのお客さんもカップルが多くて…
だからレーニャは…」
「うん…だから私は…」
「俺のところには来ないって…」
大切な人と過ごす日だから
「ユーヤのところに、来たかった
ユーヤに会いたかった」
ユーヤの胸の音とストーブの音
「…」
ユーヤの返事はなかった
陽介とさっきまで一緒にいたのは
ユーヤ絶対気付いてる
都合がよすぎて
呆れられたかな?
もぉ「好き」って言ってくれないんだね
私が「好き」って言ったら言ってくれるのかな?
でも「会いたかった」私の言葉に
ユーヤの返事はなかったから
言うのが怖かった
「ユーヤ、ケーキ食べた?」
「うん、バーのみんなで食べたよ」
さっきは答えなかったのに
今度の質問は答えた
「あのお菓子屋さんの?」
「ああ、そーだよ」
そっか…
あの人もいたんだ
私は陽介と過ごした
ユーヤも誰と過ごすのも自由
ユーヤは私を絶対責めない
だから私も
ユーヤを責めれない
「今日は腕、赤くなってない?」
ユーヤが私の手首を確認した
気にしてくれるの?
「赤くなってないね
よかったね
もぉ電車ないからタクシー呼ぼうか?」
え…
赤くなってたら
まだここにいてよかったの?
ユーヤの私への気持ちは
愛情じゃなくて同情だった?