「お嬢さんを俺にください!」

人混みの中
見覚えのある横顔がすぐ隣にあった



ん?

誰だっけ?



あ!



誰か思い出した瞬間ドキッとした



もしその隣にユーヤがいたら嫌だな…って
ゆっくりその人の隣に目をやった



違ってホッとした



見覚えのある横顔は
あのお菓子屋さんだった

隣にいる人も女性だった



この人はユーヤの引越し先を知ってるのかな?

知ってたらどーするの?


知ってたら教えてくれるかな?


知ってたら嫌だな…



「あの…こんにちは…」



思い切って話し掛けた



「え…こんにちは…
あの…スミマセン
お客さんでしたっけ?」



「いえ…私、ユーヤの…」



ユーヤのなんだろう?



「あー!こんなところで!」



「こんなところでスミマセン
急に話し掛けちゃって…」



「こちらこそ、わからなくてスミマセン
お店のお客さんかな…って思ったけど
ピンとこなくて…
初詣ですか?着物よく似合ってますね
さっき背の高い男性といましたよね?」



「あ、はい…」



「ふたりともモデルさんみたいで
目立ってましたよ
まさか、ユーヤの…って思わなくて…」



「あの…ユーヤは…
今日一緒じゃないんですか?」



この期に及んでよく聞けるな、私



「ユーヤ、忙しいみたいで…
クリスマスにバーで会ったきり会ってません」



「ユーヤの引越し先って…聞いてますか?」



「あー…
マスターから引っ越したのは聞いたけど
私は、もともとのアパート自体知らないので…」



「そーですか…
ありがとうございます」



私、ユーヤのこと聞きたくて必死だな


変な子って思われたかな?



「最近ユーヤ
コンビニでもバイト始めたみたいですよ
たしか、ここの神社の近くの…
行ってみたら?」



「そーなんですか?」



私が行ってもいんでしょうか?



「ユーヤ、私には教えてくれないけど
なんか夢があって
バイト頑張ってるみたい
私ができるのは
ユーヤの夢が叶うように神頼みぐらいかな…」



ユーヤの夢

海外に行くこと



ユーヤ本気なんだ

ユーヤ本当に行きたいんだ



「じゃあ、私も
私もユーヤの夢が叶うように
神様にお願いします」



そう言ったけど
ユーヤが海外に行ったら私…


寂しいな



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