「お嬢さんを俺にください!」

ユーヤはコートを羽織ってすぐに出て来た



「5分くらいかかるけど、いい?」



「え…」



タクシー呼ばれたかな?

それともホントに警察来るのかな?



「ここから5分くらい、歩ける?
歩けないか…」



歩くって…?



「ユーヤの新しいアパート?」



「うん、新しいアパートだけど
新しくはない
オバケ出そう
大丈夫?オバケ出ても」



「うん、大丈夫
行っても、いいの?」



「ホントは来てほしくないけど…
ま、レーニャ姫が来たいなら…」



「もぉ…姫とかじゃないから!」



「ホントにお姫様みたいで可愛いよ」



かわいい…そこに反応してしまう


ユーヤに言われると
やっぱり嬉しい



ユーヤが歩き出したから
後ろに続いた



「途中でやっぱり気が変わったら
タクシー呼ぶからすぐ言って」



「大丈夫
気なんか、変わらないよ」



変わらないよ

ユーヤが好きな気持ち



ユーヤは私に合わせてゆっくり歩いてくれた


たまに少し後ろを気にして



「足、痛くない?」



「うん、痛くない」



「着物、よく着るの?」



「たまにね
でも動きにくくて好きじゃない」



「おてんばなお姫様だな」



「だから、お姫様なんかじゃない」



「腕、痛くない?」



「うん、大丈夫」



「レーニャって白いからすぐ赤くなるよな
おてんばだけどデリケートに扱わないと…」



「ハハ…おてんばだから大丈夫だよ」



「腹減ってない?
おてんばだから空いただろ?」



「帯してるから、苦しい」



「そっか…
俺か、腹減ったのは」



「またカップラーメン食べる?
新年初カップラーメン」



「できれば正月くらいウマイの食べたい」



「ウマイのって、アレ?
ユーヤが給料日に食べてたハンバーガー?」



「あー…それもウマイ
けど正月くらいステーキとか食いてー」



「ステーキか…」



クリスマスに陽介と食べた

特に感動はなかった



ユーヤに食べさせたかったな



「レーニャ、手、冷たくない?」



「うん、大丈夫」



あ、冷たいって言えばよかった

そしたら繋いでくれたのかも…


ホントは冷たかった


ユーヤは優しいから
ただ心配してくれてるだけ


ユーヤに心配掛けたくないから
全部大丈夫って言う


ユーヤが心配したら
また家に帰されちゃうし



ん…



ゆっくり私の手が繋がれた



「ごめん…
俺の手が冷たくて、繋ぎたかった」



そう言ったユーヤの手は
温かかった



「レーニャ、嘘つきだな
手、冷たいし…」



「うん…」



ユーヤだって嘘つきだ
そう思ったけど言わなかった



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