「お嬢さんを俺にください!」
「ジャーン!
このお化け屋敷
じゃなくて、俺の新居」
コンビニから歩いて5分
もう少しかかった
私に合わせてくれたから
ユーヤが手を繋いでくれたから
もっとかかってもよかった
「今度は普通なネーミングだね
コープヤマダ」
「大家さん、山田でしょって?
幸福荘はインチキぽかったけどね」
「そお?」
私は幸せだったよ
「ようこそ、コープヤマダへ
どーぞ…」
「お化け屋敷ぽく言わないでよ」
「言ってねーし…」
入ってすぐ見覚えのあるソファーがあった
「あ、コレ…」
「大家さんちの貰った
それレトロでよくね?
レーニャよく座ってたよな」
「うん、座ってた」
「レーニャが座ると高級に見えるソファー」
「ハハ…なに?そのネーミング
大家さん元気かな?」
「レーニャ、最後会わなかったもんな
最後っていい方、縁起でもないけど…
きっと元気だよ」
「なんで、教えてくれなかったの?」
「俺も当日知ったんだ
親戚の人来てて、年内に施設入るって
レーニャに会いたがってたよ」
それは私もこの間行った時に
親戚の人から聞いたよ
「なんで、教えてくれなかったの?」
「え、だから…」
「このアパート
ここに引っ越すって
なんで、教えてくれなかったの?」
大家さんがいなくなるのも
ユーヤの新しいアパートも
教えてくれなかった
「あー…ごめん…」
「ホントは私、ここに来たらダメだった?
もぉユーヤに会ったらダメだった?」
「…」
またユーヤの返事はなかった
ユーヤは私を責めないのに
責めるように聞いてしまった
たぶん
もぉ来ないでってハッキリ言われないと
私はまた来ちゃうから
ユーヤが言わないのわかってるから
わがままになってしまう