「お嬢さんを俺にください!」

ホテルみたいな広い病室

俺のアパートより広い


テーブルの花瓶に花が生けてある



「よかったらソファーに…」



俺のじいちゃんが入院した時は
パイプ椅子だったけど



レーニャ、顔色はそんなに悪くなさそう

頬がピンクに透けてた



光沢があって品が良さそうなパジャマ

レーニャじゃないみたいで
緊張する

俺が知ってるレーニャは
いつもブカブカの俺のスウェットを着てて


一緒にいた時は
無邪気に笑ってた

今日は笑顔もなくて
ちょっと疲れた顔をしてる


レーニャも俺と同じで緊張してるのかな?


ホントにレーニャじゃないみたいで
居心地が悪かった



「コレ返しに来ただけだから、すぐ帰るよ
昨日受け取ったんだけど…
ご両親に返しておいて」



ソファーには座らず

昨日受け取った封筒をリュックから出して
レーニャに渡した



レーニャは首をかしげて封筒を手にした



「生活費とか言われたけど
俺、レーニャに特に何もしてあげてないし
逆に俺がご飯作ってもらったり
洗濯してもらったり助かったな…って…

だから1円もいらない
ご両親に返しておいて…
気持ちはありがたいって伝えておいて

あ、それだけだから…」



「…」



なんか言ってよ、レーニャ



「ごめん、急に来て
ビックリしたよな」



「…」



そりゃビックリするよな


来てくれてありがとうとか
私も会いたかったとか

そんな言葉を少し期待してた俺が
バカだった



「ごめん
もぉ、来ないから…
もぉ、会わないから…」



「…」



きっとレーニャは記憶が戻って
俺なんかと生活してたことを
後悔してるのかもしれない



「あ、それだけ…って言うか…
えっと…

ホントは…レーニャの顔見たかった
元気そうでよかった

最後、ちゃんと言いたかった

俺はレーニャに会えてよかったよ
楽しかったし…
ありがと

最後だから言うけど
俺はずっとレーニャがいてくれたらいいな
って思ってたんだ」



俺、ひとりで何言ってんの?



レーニャのひいた顔を見て気付いた



キモいって、俺



「ごめん…
最後の、ナシで…

あ、じゃあ…
元気で!

優里愛さん」



レーニャは
もぉレーニャじゃないんだ


最初からレーニャじゃなかったけど



変な汗をかきながらドアに手を掛けた



もぉ俺たち会うことないわ

サヨナラ



サヨナラ

レーニャ好きだったよ



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