「お嬢さんを俺にください!」

「あの…待って!
私こそ、言いたいことたくさんあるの!」



え…



レーニャの声に振り向いた



なに?

もぉ来ないで…とか?

なかったことに…とか?

私のこと忘れて…とか?



「レーニャって
私が飼ってた猫の名前だったの
可愛がってたから
きっとその名前は覚えてたんだと思う」



とりあえず想像してたのと違ってよかった



「へー…そーなんだ…」



「おかしいよね」



レーニャ、少し笑った?



レーニャが急に話始めたから
今度は俺が呆気にとられた



「そっか…よかった…」



俺も笑っていいやつ?



「何も言わずに帰って、ごめんね
私こそ、ありがとう
大家さんにも挨拶できなかった
大家さん元気?」



「うん、また遊びに来てって…
寂しがってたよ」



寂しいのは、俺も

また来てほしいのも、俺も



あの頃に戻りたい

1ヶ月前の話なのに
すごく遠く感じる



レーニャは
また行くね…とは言わなかった



さっきのレーニャの雰囲気で
来ないのはわかってるけど



年齢が同じだけで
生活レベルが違い過ぎる俺とレーニャ

友達っていう関係さえ無理だろう



求めたら
また虚しくなるだけだ



「じゃあ、俺行くわ
レーニャ、元気で…」



俺のこと忘れないでね
とかは言えないけど

俺はレーニャのこと一生忘れないと思う



現実離れした出来事すぎて
いつかアレは夢だったのかな…
程度の記憶になるかもしれないけど



好きだったし…



元気でね、レーニャ

俺の中ではずっとレーニャだよ



レーニャは俺の名前を一度も呼ばなかった



「レーニャ…
俺の名前、もぉ忘れたとか言わないよね?」



「え…あ…」



え!マジ?もぉ忘れた?

ショック



「いいよ
そのまま思い出さなくて…
レーニャのこれからの生活に関係ないし…」



とは言いながら
めちゃくちゃショックなんだけど



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