「お嬢さんを俺にください!」
やっぱり来なきゃよかった
病院の廊下を肩を落として歩いた
ひとりで訳のわからないこと言って
カッコつけて帰って来た
レーニャ笑ってくれたんじゃなくて
苦笑いだったかな?
緊張しすぎてよく思い出せない
あ、コンビニで買ったカップラーメン
渡し忘れた
最後、いい印象で終わりたかったけど
ダサかったな、俺
最悪
まぁ、もぉ会わないけどね
それにしてもスゴイ病院
迷子になりそう
俺みたいな庶民が来る病院じゃねーな
俺が子供の頃から行ってる
みやうち医院とは大違い
そりゃそーだ
お嬢様だし
やっぱり俺とは次元が違う
カップラーメン渡さなくてよかった
「ユーヤ!」
レーニャが俺を呼ぶ声がした
するわけないのに
幻聴か…
ユーヤって最後呼んでほしかった
「ユーヤ!」
耳鳴りとかヤバすぎ
頭おかしくなったかな俺
レーニャのこと好きすぎるせいかな
「ユーヤ!」
声がだんだん大きくなる
え…
振り返ったらレーニャがいた
「レーニャ、大丈夫?走ってきたの?
なんか、俺、忘れ物した?」
息を切らせて肩が上下に動いてた
「んーん…
…
覚えてるよ
…
名前も
ユーヤと過ごした1ヶ月も
…
全部、覚えてる
…
私も、楽しかったよ」
え、それ言うために?
わざわざ来てくれた?
泣きそうになった
泣いてもいいですか?
レーニャが俺の名前を呼んでくれることが
こんなに嬉しいって
誰にもこの気持ちわからないだろうけど
わからなくていいけど
俺、今どんな顔してんだろ
きっと情けない顔してんだろうな
「レーニャ、ありがとう
ただそれ言うためだけに
走ってきたの?」
「うん…
…
忘れないよ」
可愛い♡
天使
もしかして
もしかしたら
友達ぐらいは…
淡い期待