「お嬢さんを俺にください!」
「優里愛
今日予定どおり退院できるといいわね」
退院する日の朝
母が病室に来た
「うん」
「体調どお?」
「昨日少し寝れなくて…
でも、大丈夫」
「そぉ…
焦らなくていいからね
少しずつ思い出していけばいいから…」
過去のことは
思い出せなくてもいいと思ってる
でも
ユーヤと過ごした1ヶ月のことは
忘れたくない
昨日はユーヤが来てくれて
気持ちが高揚して眠れなかった
私はユーヤの事が好きだった
雪の日
ユーヤが繋いでくれた手の感触が
忘れられない
寒くて冷たくて感覚のない手
でもユーヤの手は温かくて
きっと優しい人だと思った
優しい手に導かれて
初めて会った男の人のアパートにあがった
優しい手を信じた
本当にユーヤはいい人だった
何かされなかった?
何か?
何かされたよ
ユーヤは優しくしてくれた
毎日が楽しかった
一緒に食べたカップラーメン
人生初のカップラーメン
ユーヤのぶんも食べちゃっても
いつも怒らなかった
ふたりストーブの前で
寒いふりをしてユーヤにくっついたけど
ホントは熱くなってた
ユーヤの匂いが好きだった
たまにタバコの匂いがして
それも嫌じゃなかった
同じベッドで寝るのは
意識しないふりをしてたけど
ドキドキしていつも寝たふりをしてた
ユーヤの寝顔を見るのが好きだった
ムニャムニャって赤ちゃんみたいで
可愛いの
私が怖い夢をみると
ユーヤは手を繋いでくれた
2回に1回は嘘をついてた
ユーヤに手を繋いでほしくて
だんだん怖い夢はみなくなった
それもユーヤのおかげだと思う
ユーヤが好きすぎて
寝てるユーヤを抱きしめたことがある
そのまま寝ちゃって
朝ユーヤにバレた
恥ずかしくなって
ユーヤがうなされてたことにした
ねぇ、ユーヤ
ユーヤ私にキスしようとしたよね?
あの時は私が躱した
ユーヤとずっと一緒にいれない気がしたし
ユーヤを好きになったらダメな気がしたから
怖かった
自分の気持ちがバレるのも
ユーヤの気持ちを知るのも
あの時
ユーヤとキスしてたら
私達どーなってたかな?
ユーヤはバイトでバーでギターを弾いてて
ファンの子がいた
それを邪魔する気がして
ユーヤの気持ちを受け入れられなかった
自分の気持ちは言えなかった
ユーヤ
私はずっとユーヤといたかったよ
ユーヤ
私もユーヤのことが好きだったよ