偽りのはずが執着系女装ワンコに娶られました
普段の秀は俺様口調で強引だし、自信たっぷりで、世界は自分のために回ってるなんて思ってそうなのに。そんな秀が、捨てられたワンコのように漆黒の双眸をうるうるさせて、縋るような眼差しで恋の様子を窺ってくる。
ーーこんなにも私のことを想ってくれてるんだ。ど、どうしよう。メチャクチャ嬉しい。
秀への愛おしさと嬉しさで、もう、胸がいっぱいだ。
胸に納まりきらない想いが涙と一緒に溢れ出す。一度決壊してしまったらタガが外れてしまったかのように止まらない。
すっかり感情が昂ってしまった恋は、涙が邪魔をして声を紡ぎ出すことができそうもない。ポロポロと涙を零しながらコクコクと何度も頷くことで応えるのが精一杯だ。
「ありがとう、恋」
秀は、今度こそ心底安堵したように表情を緩ませると、恋の身体を愛おしそうに抱き寄せ、喜びを噛みしめるようにしばらくの間しっかりと包み込んだままでいてくれた。
あたかも大切な宝物でも扱うようにーー。