偽りのはずが執着系女装ワンコに娶られました
執着系俺様ワンコの愛は深くて重い
「ではお時間になりましたらお呼び致しますね」
「はい、よろしくお願いします」
今日はいよいよ結婚式当日。
純白のウェディングドレスに身を包んだ恋は、新婦専用の控え室から出ていく式場のスタッフを見送ったあと、ソファに腰を下ろし緊張の面持ちで今か今かとその時を待っているところだ。
夢のようなプロポーズをしてもらったあの夜から、秀は緊急オペが続いて、術後管理のために職場に泊まり込む日が続いた。
それから一週間後には、多忙な仕事の合間を縫うようにして、仮住まいのホテルから新居である高級タワーマンションへの引っ越しも済ませた。
荷ほどきや諸々の手続きに追われて慌ただしい日々を送っていたため、口には出さないが疲労の色を見せる秀のことを仕事以外のことで煩わせるのが嫌だったし、触れてはいけないような気がして。
気にはなりながらも、あの傷のことは口にできずにいた。
それから、あの夜は職場からの電話のせいで中断されてしまったけれど、お預け状態はまだ続いている。
それには理由があった。
久しぶりに一緒に過ごした夜、いつもの甘いスキンシップの中で秀が「唯一無二の大切な存在である恋のことを大事にしろってことだと思う。だから、恋のことを俺だけのものにするのは神様に結婚の誓いをたててからにする」そう宣言してくれたからだ。
本音を言えば、そんなこと気にしなくてもいいのに、とも思ったが、誠実で優しい秀の気持ちを尊重することにした。