偽りのはずが執着系女装ワンコに娶られました
紆余曲折を経て挙式を終えた恋は秀にお姫様のようにエスコートされて、海辺のリゾートホテルのスイートルームへと脚を踏み入れたところだ。
その間に、ホテルの最上階にある異国情緒たっぷりの素敵なレストランで早めのディナーを堪能したが、この後のことを考えると緊張して、悠長に味わっている余裕などなかったけれど。
これから秀のものになれるのだと思うと嬉しくて、胸がいっぱいだったというのもある。
それは秀も同じだったようで、部屋に入るなり胸にふわりと抱き寄せられた。
「恋と結婚したなんて夢みたいだ」
嬉しそうに声を震わせる秀の言葉と、シトラスの爽やかな香りとが恋の鼻腔と心を擽ってくる。
秀に顔を覗き込むように熱い眼差しで見つめられただけでとろんと蕩けてしまいそうだ。
「秀に夢じゃないって証明してほしい」
そのせいか恥ずかしげもなく、とろんとした眼差しで秀を見上げつつ恋はそんなことを口にしていた。
秀は恋の願いを受け止めるように、ふっと微笑んでくれる。
恋は嬉しくて知らず笑みを浮かべ秀を見つめ返した。
ふたりの視線が絡まり磁石が引き合うように互いの柔らかな唇がゆっくりと重なり合う。
恋の唇の感触を味わうようにして、そうっと優しく触れあうだけだった口づけがしだいに深まってゆく。