偽りのはずが執着系女装ワンコに娶られました
もう抑えることなんてできそうもないと思うのに、それだけ自分のことを大事にしたいと思ってくれていることに、なんとも堪らない気持ちになってくる。
そのせいか、緊張のせいで強張っていた恋の身体がやんわりと解れていく。
あの夜は、酔ったせいだと思っていたけれど、そうではなかったのだと今ならわかる。
秀だから平気だったのだ。
翌朝のキスのときは、慣れないキスで呼吸の仕方もわからず苦しかったせいで、このまま死んでしまうのかという不安から、子供のころに体験した恐怖感が呼び起こされただけで、秀のことが怖かった訳じゃない。
その証拠に、蕁麻疹は出なかったし、秀の治療と称したスキンシップのおかげもあって、男性恐怖症の症状も一度も発症していない。
それだって、いつも恋のことを傍でさりげなく気遣ってくれていた秀のおかげだ。
そうとは気づきながらも、偽りの関係でしかないのだからと、秀への想いを封印し気づかないフリを決め込んできた。
近頃ではそれが自分では抑えきれないほどに膨れ上がっていたのだ。
それもこれも、遠い記憶に蓋をしていてもなお、秀のことを好きだという想いがずっとあったからに違いない。恋の本能無意識に秀のことを求めていたのだ。絶対に大丈夫なはずだーー。