偽りのはずが執着系女装ワンコに娶られました
恋は、不安と緊張で押し潰されそうだったのが嘘だったかのように、秀への嘘偽りない想いをしっかりとした口調で紡ぎ出した。
「私、無理なんかしてない。大好きな秀のこともっともっと知りたいし、私のこともいっぱい知ってほしい。だから今すぐ私を秀だけのものにして、お願い」
一瞬、秀のすべての動きが停止して、どうしたのかと様子を窺おうと背後に振り返ろうとした恋の身体がゴロンと仰向けの体勢になったと思ったときには、秀に組み敷かれ、真っ直ぐに見下ろされていた。
秀の熱のこもった双眸には、ゆらゆらと情欲の炎が燃えさかっているように見える。
雄を彷彿とさえる匂い立つ色香を放つ妖艶さと、獲物を射止めた獣が舌なめずりをしているような、そんな危うさを孕んでいる。
けれど、こんなにも自分のことを求めてくれているのだと思うと、怖くはなかった。
これから秀だけのものにしてもらえるのだという喜びに満ちている。
妖艶な秀の姿に見蕩れていると、「可愛すぎだろ、クソッ」と小さな呟きが聞こえてきた次の瞬間、ぐにゃりと相貌を崩した秀が暴走しそうな自制を必死に抑え込むように苦しげな声を絞り出し、ぎゅうぎゅうに抱きしめられた。
「わかった。今すぐ俺だけのものにしてやる。けどもう、抑えが効かないかもしれない。怖いと思ったら、俺のこと殴り飛ばしてでも止めてほしい。いいな?」
少しも甘くはない言葉だったけれど、どんなに甘い愛の言葉よりも恋の心を揺さぶってくる。それらに呼応でもするかのように、心音と気持ちとが昂ぶってゆく。
秀には、どんなことをされたとしても平気だし、秀にならどうされたって構わないーー。
もう胸がいっぱいで泣きそうになるのを堪えて「うん」とだけ答え秀の胸にぎゅっと顔を埋めてしがみついた。