偽りのはずが執着系女装ワンコに娶られました
ーーいつか恋の症状が落ち着いたら、秀の医師である父親のことを恋が凄いと言って目をキラキラ輝かせ、『お医者さんのお嫁さんになりたい』と言っていた、医者になって、とびきりロマンチックな出会いを果たしてやる。
そんな想いを胸に掲げて、それまで以上に勉強にも励んだ。
挫けそうになったときや恋に会いたくなったときには、店の近くまでこっそり行ったことも一度や二度ではない。
そのことで文から何度もストーカー呼ばわりされて茶化されているうち、自分でも情けなくなってきて、『これで最後だ』なんて思いながらもやめることができなかった。
そのうち、恋がどんどん綺麗になっていって、モヤモヤする感情に気づいてはじめて、恋への感情が何かを知ることになった。
それから月日が流れ、念願叶ってようやく再会を果たすことになったのに、まさかそれまで以上に恋の男性恐怖症が酷くなるなんて。ついてないとしかいいようがない。
女装男子として親友という座を手に入れてから一年間、本当に気が狂いそうだった。
こんなにも近くにいるのに、手に触れることもできないなんて、どんな拷問だよと、心の中で何万回毒づいたかわからないほどだ。
それだけの想いをしたからこそ、この上ない幸せと喜びを味わうことができているのかもしれないが、もうあんな想いをするのは御免だ。