偽りのはずが執着系女装ワンコに娶られました
それらはおそらく、派遣の契約が解除されてしまうことに落ち込んでいた、恋のことを励まそうとしての言葉だったに違いない。
そうだとわかってはいるのに、カレンに縋ってしまいたくなる。
否、もう既にカレンに縋っているから、こうなってしまっているのだ。こうなってしまった以上、前に進むしかない。
幸いなことに、どんなに大きなリスクを伴ってしまうとしても、酔ったせいにできる。
この場合のリスクとは、親友であるカレンとの関係が壊れてしまうことだ。
ーーうん。だったら恥ずかしがっている場合じゃない。女は度胸だ。どうせ明日になったら覚えてないんだし。
楽観的思考を発揮しているところに、再びカレンの声が届いた。
「どうした? 我に返って、俺とこうなったことを後悔でもしてるのか?」
先程と同じ、傲慢な物言いだ。
けれど悲しい色を孕んでいるように聞こえてしまう。
きっと恋と同じで、これまでの関係が壊れてしまうのが怖いからに違いない。